学習性無力感 とは
学習性無力感とは、一度「自分にはできない」ことを知ってしまうと、もう努力をしなくなってしまうという心理状態のことです。
一度、無理だということを「学習」してしまうと、もう努力したくない「無力感」に襲われます。
学習性無力感の状態になると、たとえ「十分に達成可能」なことであっても、やりたがらなくなります。
学習性無力感の由来
「学習性無力感」は、アメリカの心理学者であるマーティン・セリグマンらが10年間近くの研究をもとに発表した理論です。
「何をしても意味がない」と思い込んでしまうと、たとえそれが苦しい状況であったとしても、逃れようとする努力すら行わなくなるという考えです。
長期にわたり抵抗や回避の難しいストレスと抑圧をかけ続け、自分の尊厳や価値がふみにじられるような場面に置かれたとき、次のような状態に陥ります。
- ストレスがかかる状況から積極的に抜け出そうとする努力をしなくなる
- すこし努力をすればその状況から抜け出せそうだとしても、成功する可能性すら考えられなくなる
- ストレスが加えられる状況、ストレスを与えるものに対して何も出来ない、何も功を奏しない、苦痛、ストレスから逃れられないという状況の中で、情緒的に混乱する。
さらに追加研究によれば、学習性無力感に陥った状態で、相手に「達成可能」な課題を与えても、積極的に取り組もうとしないことがわかりました。
「自分では結果をコントロールできない」と一度思い込んでしまうと、積極的な努力をしなくなってしまい、諦めてしまうことが明らかになったのです。
学習性無力感の公式
学習性無力感は次の公式で作られます。
学習性無力感=(非達成感+非承認経験)×回数
非達成感:うまくできなかった経験
非承認経験:「お前はダメだ」等のネガティブなメッセージ
大きな挫折1回よりも、小さな非達成感と非承認が繰り返させるほうが、学習性無力感を感じやすいといわれています。
それらを何度も経験した人は、「どうせ無理だ」という心理的枠組みができてしまい、最善をつくすことができなくなります。
学習性無力感の例
学習性無力感の例として一番わかりやすいのが、勉強が苦手、勉強が嫌いな学生でしょう。
たとえば、一生懸命勉強したのにテストの点数が上がらなかったら、あなたはどう思いますか?
それを教師や親に罵倒されたらどうですか?
それが、何度も続いたら?
次も同じように、あるいはそれ以上に、頑張ることができますか?
私なら無理です(´;ω;`)
成績不振で、本人もかなりつらい思いをしているはずなのに、成績がなかなか上がらない人や、やる気が出ない人は、学習性無力感状態にあると考えられます。
勉強嫌いのお子さんは、これに近い心理状態にあります。
ちなみに、「学習性」という名前がついているので勉強に限った理論のように誤解されることがあるのですが、勉強以外にも学習性無力感は起こります。
例えば、仕事でミスが続いて上司から何度も罵倒をされたらどうでしょうか?もう仕事をしたくない、自分には能力がないと思ってしまいますよね。
このように、学習性無力感は、ひと言でいうと「自信をなくす」理論といえます。
学習性無力感を克服するには
では、この学習性無力感の状態をどうすれば克服できるでしょうか。
1:認知を変える
学習性無力感の人は、「できないのは能力不足」「才能がない」という認知的枠組みができてしまっています。
結果は自分ではコントロールできないと思い込んでいるのです。
そこで、この思い込みを「結果は自分でコントロールできるもの」
つまり、努力次第でどうにかなるものだという認知に書き換えます。
具体的な方法として、自分の気持ちを書き出すことが挙げられます。「自分はダメだ」と無力感に苛まれたら、どんな状況でそうなったのかを書き出します。
書き出して冷静に見てみると、自分がどういう時に無力感にさいなまれるのかがわかりようになり、対処がしやすくなります。
加えて、実はそれが根拠のない思い込みだったことに気がつくかもしれません。
このあたりは認知行動療法などを学ぶといいでしょう。
2:達成経験
「努力でなんとかなる」と思い込むだけでなく、実際にそれを経験することも重要です。
結果は自分の努力や取り組み次第である程度コントロ-ルできるという経験を重ねていくうちに、「自分はできるのかも」と思えるようになるでしょう。
まずは小さな小さな目標を立てて、一つひとつ達成してみることから始めてみましょう。勉強なら、1ページだけ勉強してみる。5分だけでいいから机に向かってみる。教科書を音読してみる。リスニング音源を流してみるなど‥
最初はそんな小さなことでOK。小さな目標を達成できたら、自分をほめてあげる。これを繰り返すうちに「自分はやればできる」と思えるようになっていきます。
3:承認経験
人から認められる、人の役に立つ経験。努力して、たとえ本人が想定した成果が出なかったとしても、誰かから認められたり、感謝されたら、自己肯定感がアップします。「またやってみよう」とポジティブな気持ちになれるはずです。
自分一人で克服するなら、どんな経験でも、自分をほめて認めてあげることが大切です。自分のことを一番良くわかっているのは自分自身にほかなりません。
お子さんや職場の部下が学習性無力感の状態にあるなら、小さな達成経験を用意するとともに、こまめに承認をして、よいところを伝えてみてください。重要なのは大きさよりも回数です。
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